今日の読み終わり

レイブラッドベリ, 宇野利泰 『華氏451度』
icon

華氏451度 (ハヤカワ文庫SF)

華氏451度 (ハヤカワ文庫SF)



先日読んだ「14歳からの社会学」(id:Tensor:20090326)の最後の章には「BOOK&MOVIEガイド」がありまして、「SF作品は社会学で世の中を考える上でとてもいい参考になる」ということで、いくつか紹介されています。そのなかで、まず初めに紹介されていたのが、この「華氏451度」です。
とても面白かったです。名作だと思いました。(すでに名作となっているのだけれど。)
「本を持つことが禁じられた社会」が舞台となっていて、人間はただただ与えられる娯楽を刹那的に受け入れていくのみ、深く物事を考えて喜怒哀楽すると不安だし不幸に感じちゃうから、とにかく悩まずパーッと楽しく暮らそうという世界を描いています。もちろん裏には人間をコントロールしやすいようにそういう社会にした権力者がいるんですが、人々はそういうことにすら疑問なんて感じず、むしろそんなことに疑問をもって悩むのなんて嫌だからスルーします、という空気の世界。そういう社会に対して主人公が疑問を抱き始めて抵抗する物語です。
別に「本を読みなさいよ」という話しじゃなくて、いろんなことを深く考えて、悩んで、喜怒哀楽しながら生きていくことが大事、そしてそうするためには沢山の物事を知らなければ考えられないじゃないか、その情報源は本だろ?というふうな解釈で良いと思いますが、本を読んで、脳も心もしっかり耕して、「気持ち」という作物が沢山できるように、大きく育つようにしなきゃいけないなと思いました。

私は、傾向として小説はあまり読まないんですが、まったく読まないわけじゃないんですよ。SF小説は好きなほうです。話しの舞台がどこか極端な世界で「よくこんな発想が思いつくな!」と感心します。今回は「本が禁じられた社会」だし、ずーっと前に読んだアイザック・アシモフの「夜来る」では、数個ある太陽がいつもどれか出ていて、いつも昼である社会が舞台です。そこに数百年に一度の日食が起こって当たり一面真っ暗闇になったら・・・という作品(これも名作)です。この舞台を思いつく発想がすばらしい。普通に現実の世界を生きていると、そんな突拍子も無い発想って出てこない。そういった世界に放り込まれたときに人間ってどうなるんだろう、どんな行動を取るんだろうというシミュレーションに似ているような気がします。そして、スティーブン・キングの作品みたいに「最終的に一番怖いのは人間」という結論に達するのか・・・。現実社会がSFで描かれるような舞台社会に、もしそうなったとき、そうなりそうになったときに我々は・・・という知恵を授けてくれてるのかもしれません。現に「華氏451度」の「本が禁じられた社会」に似た社会「本が読まれなくなった社会」になろうとしているのだから。




アイザックアシモフ 『夜来たる 長編版』(創元SF文庫)
icon

夜来たる 長編版 (創元SF文庫)

夜来たる 長編版 (創元SF文庫)