SEになろうとしている人へ

2月下旬から勤めている会社で来年度の新卒採用向けの会社説明会をやりだしました。人事担当が説明会に来た学生をゾロゾロ連れて社内を案内しています。「ここのフロアではSEが働いています。先ほど見た営業のフロアに比べると静かで、パソコンに向かって・・・」という人事担当の説明が聞こえてきました。学生さんたちが興味深げにこちらの仕事ぶりを見ているのですが、見られているこちらはさっきまで無駄話してたり、コーヒー飲んでたりしていましたが、途端にまじめに仕事をしだすものです。さっきまで怒鳴りあいの議論を白熱させていても、いきなり冷静な打合せモードに切り替わったりします。
この見学が行われるようになると「ああ、春だなあ」と感じたり、新人君(今年度入社の1年目)に「もう入社して1年経つんだねえ、お前にもあんな(初々しい)感じあったよねー」とイジッたりしています。また、内定取り消しが出てしまうような今の社会情勢のなかで「来年も人を採ろうとしているぐらいだから、うちの会社は(他より)安泰なのかな」とちょっと安心したり。ちなみに今年も十数名新人を採るとのことでした。

さて、そんな折、@ITで次のような記事が載りました。
IT業界で楽しく仕事をするための10カ条:安藤幸央のランダウン(45) - @IT

  • 其の一、本や雑誌を買って読むべし
  • 其の二、分からないことは、なるべく自分で調査するべし
  • 其の三、お気に入りのWebサイトを見つけて読むべし
  • 其の四、社内外に向けて情報発信するべし
  • 其の五、勉強会やセミナーに出席するべし
  • 其の六、専門家であるべし、さらに多くの“基本”を網羅的に知っておくべし
  • 其の七、誰が何を知っているのか、人的ネットワークを広げるべし
  • 其の八、自分のコンピュータと気に入った新しい携帯電話を持つべし
  • 其の九、1つのプログラミング言語だけではなく複数の言語を使いこなすべし
  • 其の十、適切なメモを取るクセを付けるべし

「自分はどうなのかなー」といろいろと反省しつつ、この記事に乗っからせてもらって、これからSEになろうとしている人たちへ、私なりのアドバイスを書いてみます。

其の一、本や雑誌を買って読むべし

これはできてるんじゃないかなあと思います。SEとなると、コンピュータの技術的なことから、開発手法、プロジェクト管理、業界知識などなど様々な知識が必要だし、特に、技術的なことは日進月歩なので勉強しないとおいていかれちゃいます。「買って」となると金銭的にあれもこれもとはいかないですから、図書館を利用するなど工夫をすればいいと思います。ネットの記事も参考になります。まあ、要するに、勉強を怠らない気持ちが大事ということだと思います。そのうち仕事に慣れてくると、最初は嫌々だったけれど、自分から積極的に知識を求めるようになってくると思います。そうなれば、一段とスキルが向上すると思いますよ。
「なぜ必要?」と問われれば、

    • 自分の技術力向上のため
    • 技術のない人に仕事は任せられないから(任せてもらえないから)
    • 顧客側からすれば、ベテランだろうが新人だろうが、こちらは絶対的に「プロ」なわけだから、知識があって当然という見方をされる
    • 顧客への提案ができない(仕事が取ってこれない)

などなど、いろいろあります。

其の二、分からないことは、なるべく自分で調査するべし

そうですね、その通りだと思います。自分で調査しようとする姿勢は絶対に大事です。私も自分のできる限りのことは自分で調べます。・・・というか、もう人に「訊く」よりも「訊かれる」立場のほうが多くなってきたからですかね。訊く相手がいなくなったので、もう、自分で何とかするしかない立場になってきました。
若い人には早めに身に付けて欲しいのは「切り分けスキル」と「調査スキル」です。「切り分けスキル」というのは、何かしらの問題が発生した場合、原因となる可能性の有る無しを判断しながらどんどん突き詰めていき、一体どこに本質的な原因があるのかを推理・推測するスキルです。「調査スキル」というのは、切り分けして推測される原因に対してどう対処すればいいのか解決策を調査するスキルです。正しい切り分けと正しい調査をしなければ、問題解決につながりません。
このスキルは、訓練とまで厳しいものじゃないですが、「まずは自分で」と言い聞かせながらしばらく意識してやらないと身に付かないように思います。若い人の、すぐ先輩に訊いて問題解決して安心したいという気持ちも分からないわけじゃないですが、その先輩がいつまでもアドバイスしてくれるとも限りませんし、そのうち自分が先輩になったときにどうするのか、ということまで考えてみれば早めに身につけて欲しいものです。また、その先輩のアドバイスは先輩の経験上でのアドバイスであり、今現在直面している問題の解決になるかどうかは、やはり自分で調査しなければなりません。
ただ、だからといって、ずーっと「分からない」を一人で抱え込んでおくのもマズいのです。仕事には期限があります。プログラミングでどう実装すればいいのかをずーっと悩んでいたら開発納期が間に合いません。サーバ障害や不具合対策をずーっとどうやればいいのか悩んでいると顧客からクレームが来ます。ここら辺はどこまで自分で頑張るかという見極めるのも重要だと思います。この辺が難しいかなあ。
あ、あと、いくら分からないからと言って「教えて掲示板」に相談するのはやめましょう。個人的なプライベートな場でするのはかまいませんが、「仕事でやっているプログラミングができない、どうすればいい?」とか「インストールができない、教えて!」というのは絶対やってはいけません。まず、その前に、社内で聞けば済むことです。

其の三、お気に入りのWebサイトを見つけて読むべし

私の場合、定期的に巡回しているサイトは見事に日本のものばかりです。巡回先を挙げておきます。

まだまだたくさんあるのですが、だいたいこれらのサイトを全て巡回してチェックしているわけではなくて、たいていこういうサイトにはRSSを配信しているので、それを登録してサイトの更新をチェックしています。FirefoxのアドオンSage-Tooが便利です。RSSで記事のタイトルとか要約を見て興味を持ったらそのページに行くという感じです。そして、読んで参考になるのでブックマークしておきたかったり、今は全部読めないけど後で読む場合は、はてなブックマークにエントリしておくと便利ですよ(id:Tensor:20090305 参照)。

其の四、社内外に向けて情報発信するべし

社内へは情報発信してるけども、社外にはこのブログぐらいだなあ。このブログが情報発信のようには感じてないけど・・・。記事にもありますが、就業規則があったり、仕事上、立場上社外への情報発信には慎重にならないといけません。有益情報だと思って発信しても裏を返せば情報漏洩だったりするわけですから。
社内へは社内メールや朝礼で「こんな問題があった」とか「こうやったら解決した」とかいった情報は出して、みんなで共有するようにしています。そうすることで、「あの問題は、Tensorが知ってるぞ」とか「なんかそういうことTensorがこないだ言っていたなあー」となって私のところに訊きに来るわけです。要するに、誰がどんな情報を持っているかを知るだけで、会社として抱える問題の解決スピードが上がるのです。

其の五、勉強会やセミナーに出席するべし

これは私、ぜんぜんやってません。今後、機会があれば・・・。

其の六、専門家であるべし、さらに多くの“基本”を網羅的に知っておくべし

SEと言ってもいろんな人がいるし、扱う業種や、扱う案件によって様々です。何でもかんでも知ってる人っていうのはよっぽど凄い人です。ある程度基本は知っていなければなりませんが、ある程度の先は得意分野を持つといいと思います。「通信の部分は彼が詳しいから彼に頼もう」とか「工場の生産管理システムの設計は彼に訊けばいい」という風になり、不得意な分野をやってもらう人にとってもハッピー、得意な分野をやらせてもらう人もハッピーという、いい感じになります。もっと言うと、「技術的なことよりも提案活動やプレゼンのほうが得意」とか「プロジェクト管理は苦手で・・・」という自分の適正みたいなものが分かって、お互いに得意なことを持ち寄ればいいんじゃないかなと思います。と言うことで、「持ち寄れるもの」を一つぐらいは見つけましょう。

其の七、誰が何を知っているのか、人的ネットワークを広げるべし

あ、これは其の四、其の六のミックスですね。

其の八、自分のコンピュータと気に入った新しい携帯電話を持つべし

これは、仕事というより趣味の範囲のような気が・・・。会社で支給されるPCは自分で選べないのが普通だし、セキュリティやなんやらで操作に制限がかかってたりするので、まあ、自宅のPCは好きなの持てよ、ということなんでしょうね。で、そのPCをいじり倒せよ、ということなのかしら。

其の九、1つのプログラミング言語だけではなく複数の言語を使いこなすべし

そうですね。複数知ってるといいと思います。「私、VBしか分かりません」ではちょっと頼りないです。言語の流行やバージョンアップも早くて、また、言語にはコンピュータにやらせることに得意・不得意があったり、メジャーかマイナーかといったものもあるし、こういった状況の中で「たった一つだけ」で仕事していくには5年持たないかもしれません。これはプログラミングする人だけでなくて、設計する人にも言えるんじゃないでしょうか。
【参考】「開発言語」を知らない設計者:地方からの戯言:エンジニアライフ
でも、まあ、私がSEになったときは、大学で数値計算で使ってたFORTRANしかほぼ知らない状況でしたが、何かしら一つ言語を知っていれば、他の言語も記述の仕方が違うぐらいで、基本的なことは同じなので、習得は難しくないと思います。

其の十、適切なメモを取るクセを付けるべし

メモ、取ってください。メモる癖をつけてください。仕事していると、いろんな人からいろんなことを言われますから、絶対に覚え切れません。ましてや電話対応したときにはもう・・・。どこの誰から電話がかかってきてるのかすらメモらずに電話を回すと、回した先で「誰から?」と聞かれて「あ、忘れました」ってことになったときには、もう!!
質問しに先輩に聞きに行く場合や、仕事の報告・相談をしに上司のところへいく場合も、話しの要点をメモにまとめて、メモを持っていくようにするといいですよ。

さて、10か条、他人が書いた記事に乗っかる形で、私の反省も含めて書いてきましたが、疲れました。こんなにたくさん書くとは思ってなかった・・・。まあ、あくまで私の反省+私からのアドバイスみたいなものですから、会社や立場によっていろいろと私と違った意見があると思います。「私はこう思う!」というのがあれば、コメントにでも書き込んでいただけるとありがたいです。私も勉強させてもらいます。

そして、4月にうちの会社に入ってくる新人さんたち、「心配せずに入社してきて!鍛えてあげるから」。