今日の読み終わり

戸塚洋二『戸塚教授の「科学入門」 E=mc2 は美しい!』

戸塚教授の「科学入門」 E=mc2 は美しい!

戸塚教授の「科学入門」 E=mc2 は美しい!



戸塚洋二氏は今年の7月に亡くなられました。著者は「ニュートリノ振動」を観測し、ニュートリノに質量があることを突き止めた研究で「次に物理学賞を受賞するのはこの人だ」と言われていた人でした。それだけに亡くなられたことも、受賞されなかったことも残念です。
この本は、入院前のインタビューと、病気で引退されてから綴っていたブログ「科学入門」をまとめたものです。インタビュー部分では、著者の研究者生活のことが語られていて、著者の人柄がうかがえます。「科学入門」部分はなるべく分かりやすいように物理学、特に素粒子物理学を解説しています。話題の中には、著者と交流があった学者のことについても触れられていて、なかなか面白いです。また、途中に「植物のいい加減さ」について触れられている章があって、著者の観察力や「疑問に思う着眼点」に感服しました。物理学には主に「理論家」と「実験家」がいますが、著者は実験家の方です。ですので、語り口が柔らかい印象があり、読みやすい文章でした(私の先入観かも?)。実験家らしく「実験結果が理論と一致する」という内容がところどころに出てきます。
内容は、たぶん量子力学とか素粒子物理学をチョットは知ってないと完全に理解は難しいかもしれませんが、数式とかは「こんなものか」ぐらいで読み流せば、高校生ぐらいの方でも、現在の物理学の最前線(あたり)のことが掴めるんじゃないでしょうか。
著者が闘病しながら書いたことを思うと、切なくなりますが、著者も述べているように、これから物理学を学びたいとか、素粒子の研究をしたいと思っている若い方に是非読んでおいていただきたいです。




著者のご冥福をお祈りいたします。